第7回の記事に続いて、今回は家族が亡くなった際に残された親や家族の公的手続きについて解説していきます。
残された家族がいち早く新生活を迎えられるよう、私の実体験も踏まえながら手続き内容について分かりやすくまとめていきます。
前回記事では「不動産賃貸業による収入がある場合」の手続きについて解説しました。
金融機関で行うこと
不動産賃料がある場合の手続きが終わったら、金融機関で行う手続きに移ります。
第6回記事にある保険会社での手続きと同様、銀行についても、故人の口座がある銀行が不明な場合は、手当たり次第各行に確認する以外に方法はありません。
我が家でも、手当たり次第に銀行を巡る結果となりました。
故人の口座を発見した場合、その銀行に口座名義人が亡くなったことを伝えた直後から口座は凍結されて使えなくなります。口座凍結前にすべきことについても合わせてご確認ください。
1. 口座凍結前に記帳、公共料金の引き落とし口座を変更
亡くなったことを銀行に伝える期日は法的には存在しません。つまり、これから説明する「口座凍結前にすべきこと」を終わらせて、準備が整ってから口座凍結をすることを強くお勧めします。
1.1 口座記帳
口座凍結後は、基本的に残高照会や通帳記帳すら行うことができなくなります。その口座にどれくらの資金があり、どんな使われ方をしていたか、特に公共料金やサブスク、クレジットカードの引き落とし口座になっていた場合は、口座凍結後の支払い方法に目処をつけておかないと、慌てることになってしまうため要注意です。
また、死亡日の数年前において大きな資金の移動がある口座は金融庁からも目をつけられやすいと聞きますので、その資金がどんな使われ方をしたのか、または、どういう理由で入金されたものなのか、できる限りの調査をしておきましょう。数百万円のATM引き出しがあったが、他の銀行に入れられていない&どこかに振り込んだ形跡もない場合は、自宅などにタンス預金されている可能性も考えられます。タンス預金は故人の財産として相続税申告の際に計上する必要があるため、注意しておきましょう。
1.2 公共料金の引き落とし口座を変更
故人の銀行口座が電気、ガス、水道、電話などの公共料金の引き落とし先になっている場合には、名義変更と引き落とし先の変更を速やかに行いましょう。
その他サービスに係るサブスク費用の支払いについては、残された家族が今後も引き続き使用するものについては、公共料金と同様に名義変更と引き落とし先の変更を行いましょう。今後使用する予定のないものは解約申請をしておきましょう。
また、クレジットカードの引き落とし先になっている場合は、クレジットカード会社に連絡をして未払金の請求先変更とカード廃止手続きを行いましょう。
尚、公共料金、サブスク費用、クレカ代金の請求金額該当期間が故人の死亡前にあたる場合は、相続税申告の際に負債として未払金分を差し引くことが可能です。要するに、故人が生前使ったサービスで費用が発生していたけれども、支払いは死亡日以降になっていたため、代わりに家族が払ったケースは、その代金は故人の相続財産から差し引けるということです。
故人が発生させて費用ですから、家族が代わりに負担を強いられないのは当然ですよね。
2. 故人の預金口座凍結
ここまでの手続きを行ってから預金口座の凍結手続きに入ります。
基本的には、該当の故人が口座名義人である口座の金融機関に死亡した旨を伝えることで、すぐに凍結されます。遺産分割協議が終了して、誰が故人の預金口座を相続するのか決まった後で、相続人が金融機関にて手続きを行うことで、名義が変わりその人の財産として元通り使用することができるようになります。
相続人が決定した後の手続きについては、本シリーズ記事後編で説明します。
まずこのタイミングでは、金融機関に口座名義人が死亡したことを伝えて口座凍結を行いましょう。
3. 口座凍結後に一時的な資金の引出しが必要な場合は仮払い制度の活用を検討
葬儀費用や死亡前に入院費・手術代など、死亡後はまとまった資金が必要になることが多々あります。
私の一家も例外ではなく、死亡後に葬式費用・お布施、お墓、病院費用、手術代など大きな出費が必要になりました。
銀行口座の凍結手続きをとった後で、大きな出費が必要になることがわかった場合、口座凍結解除には相続人全員の協力がある前提で数週間は最低限かかってしまいます。遺言がない場合で、相続人のうち1人でも協力しない人がいる場合、口座凍結解除はできないと考えておいた方が無難でしょう。途方もない時間がかかると思われます。
そうなってしまうと、残された家族の生活が立ち行かなくなってしまう可能性も考えられます。
そこで、令和に入ってから国が「仮払い制度」と呼ばれる新制度を設立しました。
「仮払い制度」とは?
本制度は令和元年7月1日から創設されました。この制度を活用することで、各相続人が単独で凍結されている口座から預金の引き出しを行うことができます。
ただし、引き出せる金額には下記の通り上限があります。
「亡くなった人の死亡時の預金残高×3分の1×払戻しを受ける相続人の法定相続分」(ただし、同一金融機関からの払戻しは150万円が上限)
実際に私の一家でも銀行に本制度について問い合わせをしてみたところ、銀行ごとに対応が異なりました。窓口の担当者レベルでは、残念ながら本制度について知見を有していないケースも見られたので残念です。新制度ということもあり、まだまだ浸透しきっていないのかもしれませんが、国が作った列記とした制度ですので、しっかり主張をして活用していきましょう。
【必要書類】
- 各銀行所定の申請書
- 亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本(法定相続情報一覧図で代替可能)
- 相続人全員の戸籍謄本(法定相続情報一覧図で代替可能)
- 引き出しを行う相続人の印鑑証明書
その他の手続き(第9回記事へ)
ここまで金融機関での手続きが終わったら、次の「その他」の手続きへ移りますが、本記事の長さを考慮し、次回記事に記載します。
少しでも本記事が皆さんに役立つことを祈っております。心に余裕が持てれば、故人を悲しむ時間を十分に取れます。迅速に手続きを行う事ができれば、次の生活への切り替えも早くなります。
また、出費という観点でも、極力自分で進めることで圧倒的に低く抑える事ができます。恐れず、勉強も兼ねて手続きにトライしてみましょう!
第9回記事へ続く。。。
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