実体験から伝えたい「親が亡くなった後に行うこと②」

第一回目の記事に続いて、今回は家族が亡くなった際に残された親や家族の公的手続きについて解説していきます。

日本では社会保障制度や税務申告など人生の中で本当に必要なことが義務教育から外れてしまっています。当然例外なく、我が家も私を除いてこの辺りの手続きについて知識が皆無だったため、私が手取り足取りサポートをしました。
その内容を分かりやすくまとめていきたいと思います。

親が亡くなった日から初七日までの手続きについては前回記事にまとめた通りですが、悲しみに暮れる暇もない程怒涛のスケジュールになります。しかし、ここまで終わらせたからと言って一息着くのはまだ早いです。むしろ、ここからが大変になると思っていただいた方が良いです。

あくまで私の体感ですが、葬儀社に色々とサポートいただいた葬儀実施までの流れの方が考えることが少なく気持ち的には楽でした。流れに身を任せて体を動かせば良い、という感覚です。
ただし、今回の記事でまとめる公的手続きに関しては、家族の状況によって手続きも少し変わってくるため、自分で調べて進める事項が多くなってきます。

手続きには期限も当然ありますが、中には手続きしないとお金を受け取れるはずの権利を喪失してしまうことになります。せっかく、国の制度として給付金が用意されていたり、亡き親が生前に保険金など契約しておいてもらったとしても、申請しなければ誰も親切に教えてくれることはまずありません。
悲しい話ですが、国や保険会社からしたら、お金だけ払ってもらい、支払いがなくなれば儲け物ですから、わざわざ手取り足取りサポートする意義はないのでしょう。
きちんと知識をつけておかなければ、どんどん損をしていく、そんな世の中を表す一例だと感じています。

この後の手続きの中で度々金融機関へも訪れることになりますが、皆さん口を揃えるように

「死亡後の手続きや相続でお困りではないですか?サポートしますよ」

と言ってきます。はっきり申し上げて、金融機関は別に何の士業(税理士、司法書士、弁護士 等)でもありません。ただ、死亡後の手続きの流れを手取り足取り説明するだけで、コンサル料など題してとんでもない金額を請求されるでしょう。
それでも、手取り足取り教えてもらいたい方はコンサルティングを受けるのが良いかもしれません。
ですが、私としてはせっかくこの記事を執筆していますから、まずはこのシリーズ記事を読んでいただき、それでもわからなければ自分なりに調べて、本当に最後の最後の手段としてコンサルティングを受けることをおすすめします。

今後の世の中を生き抜く上では、社会保障制度、年金など公的手続きについて一定の知識が重要になってきますから、極力自分達で進めて、同時に知識をつけることを強くお勧めします。

今回ご紹介する公的手続きについて下記に記載します。

  1. 住民票の世帯主変更
  2. 法定相続情報一覧図申請に必要な書類の手配
  3. 扶養親族の国保加入手続き
  1. 法定相続情報一覧図の申請 ←超オススメ

~亡くなった親が加入していた健康保険組合で行うこと~

  1. 資格喪失証明書の受領
  2. 埋葬料の申請
  3. 保険料還付金の確認 ←相続税申告に必要
  4. 高額療養費の還付申請の流れを確認 ←相続税申告に必要
  5. 死亡した年の支払い済み保険料証明書の受領 ←準確定申告に必要
  6. 健康保険証の返還

~亡くなった親の勤め先で行うこと~

  1. 死亡日までの源泉徴収票の受領 ←準確定申告に必要
  2. 死亡退職金の有無の確認 ←相続税申告に必要
  3. 弔慰金制度の確認・申請
  4. 社員証など会社のものを返還

~年金事務所で行うこと~

  1. 訪問予約 ←早いタイミングで電話するのがオススメ
  2. 国民年金の加入手続き
  3. 遺族年金の加入手続き
  4. 中高齢寡婦加算の申請
  5. 寡婦年金、死亡一時金受給申請
  6. 故人の未支給年金の請求

~死亡保険がある場合~

  1. 保険会社に契約有無の確認
  2. 死亡保険金の申請 ←証明書は相続税申告に必要
  3. その他該当する給付金の有無について確認(入院中の給付金 等)

~不動産賃貸業による収入がある場合~

  1. 賃料振込先の一時的な変更を依頼(遺産分割が終了するまで)
  2. 正式な賃料振込先を連絡(遺産分割終了後)

~金融機関で行うこと~

  1. 口座凍結前に記帳、公共料金の引き落とし口座を変更
  2. 故人の預金口座凍結
  3. 口座凍結後に一時的な資金の引き出しが必要な場合は仮払い制度の活用を検討

~その他(故人のクレジットカード、各種サービス解約など)~

  1. 引き続き利用するサービス(光熱費、固定電話、インターネット等)の引き落とし口座変更
  2. 故人の携帯電話の解約
  3. 故人のクレジットカードの解約(死亡日までに未払金がある場合は明細取得) ←相続税申告に必要
  4. 故人の免許証の返還
  5. 故人のパスポートの返還

それでは、順に見ていきましょう。

市区町村の役所で行うこと

まず初めに市区町村の役所で行う手続きについて見ていきます。

1. 住民票の世帯主変更

亡くなった親が世帯主の場合で、同居人が新たに世帯主となる場合は、本手続きが必要となります。
私の家の場合、父母が2人で暮らしており、父親が世帯主であったため、専業主婦の母親が世帯主になる形となりました。

母を連れて市役所へ行くと、死亡届の提出と同時に世帯主が自動で変更されていました。もしかすると、母親が死亡届を提出した際に「世帯主変更届」を同時に提出していたのかもしれません。
私の両親のように次の世帯主が明らかな場合は、死亡届を持って自動でシステムにより変更されるケースが今後増えてくるかもしれません。

通常通り「世帯主変更届」の提出が必要な方は下記をご覧ください。

【期限】
死亡後14日以内。提出が遅れた場合、5万円以下の罰金あり。

【必要書類】

  • 届出人の本人確認書類(マイナンバーカードや免許証など)
  • 届出人の印鑑

2. 法定相続情報一覧図申請に必要な書類の手配

せっかく役所に来たのであれば、忘れずに下記の書類を取り寄せて起きましょう。

  • 被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本及び除籍謄本
  • 被相続人(亡くなった方)の住民票の除票
  • 相続人全員の戸籍謄本または戸籍抄本(被相続人の死亡日以降に取得の書類に限る)
  • 相続人全員の住民票(被相続人の死亡日以降に取得の書類に限る)

上記は、後ほど法務局で申請する「法定相続情報一覧図」の申請に必要となります。
正直に申し上げて「法定相続情報一覧図」をいかに早く取り寄せられるかが勝負の分かれ目と言わんばかりに、この後の手続きで重宝します。逆にこれがないと、上記4種類の書類を毎回の手続きごとに持っていかなければなりません。機関によっては原本提出が必要になるため、手続きの回数分発行が必要になりますが、例えば「被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本及び除籍謄本」と「被相続人(亡くなった方)の住民票の除票」は1通で合計1000円は超えますので、書類の管理の面倒さだけでなく、料金的にも馬鹿になりません。

【期限】
特になし。この後の手続きの手間・費用が大幅に削減されるため、可能な限り早いタイミングでの取得がオススメ。

3. 扶養親族の国保加入手続き

私の家族のように、亡くなった親が配偶者を扶養しているケース等の場合、扶養されていた人は

第3号被保険者(第2号被保険者に扶養されている人)」から
   ↓↓
第1号被保険者(会社員や公務員、扶養されている立場を除く)」へ

社会保険の種別を変更する必要があります。

扶養されている専業主婦の方は、あまり自らの社会保険について意識することはないかもしれません。パートでバイトをしている方は「106万円の壁」や「130万円の壁」など耳にしたことがあるかもしれませんが、まさしくその部分に関係してくる話です。

これまでは配偶者に扶養されていたので、自らの社会保険料(健康保険、年金、介護保険 等)を納めなくても、自らが支払っていたものとして処理されてきました。
(これが日本国がサラリーマン(第2号被保険者)を超絶優遇している理由の一つです。)
ですが、これからは扶養してくれていた配偶者が亡くなったために、自分の保険料は自らが納める必要性が出てきます。そのために、社会保険の種別を変更する必要がある訳です。

恐らく、第3号から第2号へ移る方は少ないと思いますので、ほとんどの方が第1号被保険者となり「国民健康保険(通称:国保)」と「国民年金」に加入することになるでしょう。

私の母も例外なく、国保と国民年金へ加入することとなりました。母は日本の社会保障制度について知識が乏しく、私の言われるがままに手続きを進めていました。一家に1人、社会保険について詳しい人がいるとこの時かなり手続きが進めやすくなりますので、こちらの記事をご覧になられた方はぜひ今のうちに勉強をして、事が起きた時に一家のピンチを救いましょう。

国保への加入は市役所、国民年金の加入は年金事務所となるケースが多いと思いますが、地域によっては市役所で国民年金への加入も行えるかもしれません。

また、国保への加入手続きには、死亡した方が加入していた社会保険組合から「資格喪失届」が必要になるため、世帯主変更や戸籍謄本などの取り寄せタイミングと同時に行うのは難しいかもしれません。
私の一家でも、健康保険組合から資格喪失届を受け取った後に再度役所へ訪れて手続きを進めました。

【期限】
死亡後14日以内。期限を過ぎると、特別な事情がない限りその期間の医療費は全額自己負担となるため、早めに手続きを進めましょう。

【必要書類】

  • 死亡した方が加入していた健康保険組合の資格喪失証明書
  • 本人確認書類(マイナンバーカードや免許証など)

法務局で行うこと

市区町村の役所で必要書類を手配したら法務局で「法定相続情報一覧図」の申請を行いましょう。

1. 法定相続情報一覧図の作成 ←超オススメ

私の一家は市役所で手配した下記4種の書類を手にして、法務局へ伺いました。

  • 被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本及び除籍謄本
  • 被相続人(亡くなった方)の住民票の除票
  • 相続人全員の戸籍謄本または戸籍抄本(被相続人の死亡日以降に取得の書類に限る)
  • 相続人全員の住民票(被相続人の死亡日以降に取得の書類に限る)

窓口で申請する方が相続人であることを前提として話を進めます。

私の一家の場合は、私が付き添って母が申請人となり、申請を行いました。
申請の際は、申出人の本人確認書類(運転免許証など)も必要となるため忘れないようにしましょう。

これも重要なのですが「法定相続情報一覧図」というのは、自分で準備した書類に対して法務局が承認し印鑑を押すことで公的な書類となります。国が出しているExcel形式のテンプレートがありますので、こちらを使用して作成するのが良いでしょう。
正直、こんな自分で作るような書類が本当に公的な書類として使えるのか半信半疑でしたが、手続きを一通り終えた今言えることは「この書類作っておいて本当よかった〜」です。その利便性に驚き、感動すらしています(笑)

「法定相続情報一覧図」とは?

本制度は、平成29年に出来た制度です。
公的手続きを一通り終えた後、故人の所得税申告(準確定申告)や相続税申告などの税務申告に話が移っていきますが、その際に各金融機関に何度も足を運びます。亡くなった方が一つの金融機関で資産を管理していれば非常に楽なのですが、ネット銀行が普及しまくる昨今の世の中、資産を複数の金融機関に分散されている方もいらっしゃると思います。その数が多くなればなるほど、窓口でその都度

  • 死亡した事実が確認できる書類(死亡診断書など)
  • 被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本及び除籍謄本
  • 被相続人(亡くなった方)の住民票の除票
  • 窓口で手続きをしている相続人の戸籍謄本/抄本、住民票  等

膨大な書類を求められます。要は、口座を持っていた当人が本当に亡くなったのか、窓口にきている人は本当に相続人なのか関係性を確かめる、事が必要になる訳ですね。
そして、これを一発で証明できるのが今回法務局で申請する「法定相続情報一覧図」になる訳です。

ちなみに、「法定相続情報一覧図」は無料で何枚でも受け取れるため、不安な方は法務局で申請する際に「50枚ください」と言ってもいいかもしれません(笑)
承認されたデータは法務局で5年間保存されるため、あとで枚数が足りなくなって場合も、無料で追加手配することは可能です。私のオススメは、初めに多めに枚数を申請しておくのが良いです。なんせ無料なのだから!

法定相続情報一覧図を申請する際に提出した書類は、承認が終了した後戻ってきますので、ご安心ください。申請時は「承認されれば2週間程度を目安に無料交付します」と言われましたが、実際は1週間経たずに郵送で受け取る事ができました。

亡くなった親が加入していた健康保険組合で行うこと第3回記事へ

法定相続情報一覧図の申請が終わったら、次の「健康保険組合」手続きへ移りますが、本記事の長さを考慮し、次回記事に記載します。

少しでも本記事が皆さんに役立つことを祈っております。心に余裕が持てれば、故人を悲しむ時間を十分に取れます。迅速に手続きを行う事ができれば、次の生活への切り替えも早くなります。
また、出費という観点でも、極力自分で進めることで圧倒的に低く抑える事ができます。恐れず、勉強も兼ねて手続きにトライしてみましょう!

第3回記事へ続く。。。

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